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本年度ミラノ賞受賞の宮園夕加さんにミラノでの暮らしを紹介していただきます。
今日は、今の私の日常を綴ります。
ミラノの景色を日常の風景として見れること、それは前から望んでいたことで今とても恵まれた環境にいるのですが、正直に言うと、今の私にはそれを堪能する余裕がたくさんあるとは言えません。だからこそ、このブログに残しておこうと思います。
朝、東向きのマンションの大きな窓から朝日を眺めて、一日がスタートします。
平日、月曜日から金曜日の朝9;30~18:30までMIGLIORE SERVETTOという建築・デザインの事務所に通っています。全員イタリア人です。専門分野の違う私ですが、それでもできる仕事、例えばPhotoshopを使って空間の合成イメージを作成したり、資料となる画像を探しなどを手がけさせて頂いています。
↑ 最寄り駅からこの運河沿いを歩いて通っています。
お昼休憩は13:30からの一時間。みんな一緒に昼食を食べています。タッパーでパスタやサラダを持ってきて、お皿に盛り直して食べます。タッパーで食べないところがイタリア的美意識ですね。食後は必ずエスプレッソを飲みに近所のバールへ行きます。
平日の火曜日と木曜日は、夜の二時間の語学学校に通っています。なんとかイタリア語を話したり聞けたりできるようになったものの、まだみんなの日常会話にはついていけません。仕事の指示も聞き返してやっと分かるという場面もある状況なので、語学勉強はずっと続けています。
何が辛いか…?やはり語学です。
ミラノに着いてすぐは全く話せませんでした。日本で勉強を始めたのが11月。5ヶ月間、会社に通いながら勉強をしていたのですが、ミラノ到着時はあまりの分からなさに愕然としました。語学学校といってもイタリア人の先生がイタリア語をイタリア語で説明します。日本語ですら理解できなかった文法をイタリア語で説明されても…語学学校ですら泣きそうになる場面が何回かありました。何故って…先生が怖かったのです。
そんな中、近所のパン屋さんのマハムーという店主さんに何度も助けてもらいました。彼はエジプト人なのですが、とにかく明るい人でいつも笑っています。全く話せなくて困っている頃、「ゆっくり少しづつ勉強するしかない」と励ましてくれたり、イタリア人の友人からのメールで辞書を引いても分からない表現がある時はマハムーに聞きに行ったりしていました。パンを買わない朝も「チャオ、マハムー!」「チャオ、ユウカ!」と挨拶だけ交わして事務所に行きます。そうすると、なんとなく一日を頑張れる気がします。
↑ マハムー。笑顔が眩しいです。
マハムー以外にも、女子美の大先輩である奈津子さんと和子さん、そしてその周りにいらっしゃる方々、イタリアで知り合った日本人の方、イタリアのボタンメーカーさん、近所のバールの店長、クリーニング屋さんの奥さん、マンションのご近所さん…たくさんの人に助けてもらっています。それでやっと、ここで生きていけています。
人に親切でいたい。
本当に基本的なことですが、よく思います。
宮園 夕加
Yuuka Miyazono
2008年女子美術大学芸術学部ファッション造形学科卒業後、清原株式会社入社。
2010年第16回「日本ボタン大賞」グランプリ 経済産業大臣賞 受賞。
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