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柏原 知子
1990年
(女子美術短期大学 造形科 衣服デザイン教室)卒業
現在、企業にてテキスタイル素材開発・デザインを担当。織物を中心に、プリント・染めなど
生地づくりから小物やインテリア、雑貨のテキスタイルなど製品メーカーと産地をつなぐ仲介者的役割を担っている。
>>テキスタイルデザイナーになった理由:
女子美時代は生地の染織から服作りまで一貫したものづくりだったので、パターンや縫製だけでなく
布つくりにも大変興味をもちました。小さいころから生地の色や柄を見るのが好きだったので
自然に布の魅力に魅かれていきました。
女子美を卒業後、テキスタイルコンバーターの製品部でブラウスの企画・生産管理の仕事に従事し、
様々な生地に触れたことからよりテキスタイルの知識を深めるため夜間のテキスタイルデザイン学校
でプリントデザイン、染め・織りの基礎を学びなおしました。
その後はイタリアの工業テキスタイルデザイン学校で機械織りとデザインを習得する傍ら、企業で
仕事の経験を積むことで、ファッションからインテリアまで幅広くテキスタイルの仕事に携わりました。
>>イタリアでの経験:
私が学んだ学校は地場産業の後継者を育成するところだったので、現場で即戦力になる技術を身に着けました。
卒業後はテキスタイルデザイナー、図案家、テキスタイルコンバーターなどに従事する生徒が多くいました。
授業では織物用の図案作成から組織(織物の構造)設計、紋紙(機械が織物の柄を出すための装置)の作成、
実際に機械で織物を織る作業まで一貫して習得しました。これにより生地を製造する工程を実践でき、
一からモノづくりをする知識と技術を習得しました。昼間は現地のインテリアテキスタイルメーカーや織物工場で
経験を積んだことで実際に学んだことを生かすことができました。
>>日本との違い:
日本では製造メーカーとデザイン・ファッションメーカー間の知識の共有が不足していると思います。例えば
テキスタイルデザイナー=プリントの図案家の印象もありますが、織りとプリントでは根本的に図案作成の原理が
異なるので図案デザインも織り工程の知識がないと仕事が成り立ちません。また、織物の組織(構造)や機械の仕組み
を理解している必要があります。イタリアの学生はまず現場の専門知識や技術を学んだ上でデザイナーや技術者になるので
かなり実践重視の教育です。プリントに関しても同じことが言えます。一方、日本では生地の知識をあまり学ばずにデザイナーに
なるので一から創造していくもの作りには弱いかもしれません。
>>女子美で学んだ良い点:
先の学校の内容は専門技術が身につくのはよいのですが、自由な発想をすることに慣れてからのほうが
柔軟でいられると思います。先ずは様々なものを見て、感じて、アイデアを沢山集める習慣を身に着けることは
学生時代でだからこそ出来ると思います。でも卒業するまでには自分のアイデアを実際の現物にあげられるくらいの
知識と技術つくのが望ましいと思います。。
>>女子美の学生にメッセージ:
社会に出たら何故それを作るのか?誰の為に作るのか?という常に目的を持った作業になってきます。
現場の職人さんに依頼する側のデザイナーになる人も、その逆で産地の製造メーカーとしてデザイナーの仕事を受ける側に
なる場合もあるかもしれません。また、アーティストとして思想でコミュニケーションを図る仕事に就く人もいると思います。
いずれにしてもひとつの仕事を実現化するためには、ものづくりにおいて自分とかかわる人達の仕事を理解し、敬意を表することが
とても大切になってきます。そうすることによって多く学べ、より良い仕事ができます。
ですから様々なことに興味を持って常に柔軟な心でいられるよう学生時代から心がけてください。
きっと自分自身も楽しめるはずです。
*写真補足説明
プロフィール写真
・国内の織物工場を探して、生地の企画デザインをしたもの。
・ジャカード織りの図案と生地、カラーバリエーション。
・カラーコーディネイトした無地の生地。
・作者本人。
三種の神器。
・生地の糸密度を計算、織り組織の解明など分析に欠かせないレンズ。
・生地を糸一本ずつほぐす道具。
・糸の目付や番手計算、織り組織や紋線図を描くのに欠かせない方眼ノート。