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平成24年度パリ賞受賞の井上織衣さんにパリでの暮らしを紹介していただきます。
フランス南東部のリヨンからほど近い街、サンヴァリエ。
前から気になっておりました、Le Palais Idéal de Ferdinand Cheval
(シュヴァルの理想宮)を見に行ってまいりました。
1879年のある日、郵便配達員のフェルディナン・シュヴァル氏が
いつものように仕事をしていたところ、石につまずいてしまいました。
そのふしぎなかたちの石に魅了され、33年の月日を経てこの城塞が完成したそうです。
その姿はまるで生きもののようです。
外にも中にも、彼の残した多くのメッセージが刻まれております。
鳥のような魚のような羊のようなヘビのような。
そんな生きものの姿が随所に見受けられます。
« 生命の泉で、わたしの才能を描いた »
彼は、農民階級の中にも天才が存在したことを証明したかったのです。
自分の棺をここに納めたかったのでしょうか。
命が宿っているかように、彼の訴えをひしひしと感じました。
照りつける日差しがくっきりとかたちづくる影を見ながら。
井上 織衣
Orie Inoue
2008年女子美術大学大学院修了。ファッション造形学科専任助手を務めた後、インスタレーション・イラスト・アニメーションなどの様々な媒体を通したアーティスト活動を行う。
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